2009年4月11日土曜日

[BOOK REVIEW] "small images"石上純也_建築家のしたたかさ



 今では、石上さんは「かわいいパラダイム」の筆頭のように感じる。石上さんの本に「small images」がある。この本は、かわいらしいドローイングの表現に目を奪われてしまう。しかし、個人的には、そのかわいらしいドローイングの奥に、「かわいい」とは似つかない建築に対する意志を感じた。新しい空間を創造しようという意志。このKAIT工房のように、土地から切り離されたような浮遊感を目指した建築表現は、今やそんなに新しいものではない。フラットな屋根に細い柱というボキャブラリーもこのような低層の日本現代建築にはありきたりなものである。しかし、その柱の細さをランダムに変化させることであり得ない細さの柱を実現し、屋根の構造もX,Y方向の力を処理できる構造になっている。この作品を初めて見たのは新建築だったと思う。私と同じように「やられた」と思った人は多かったのではないかと思う。構造に対して真摯な態度を持ってたからこのような表現が出てきたのだろう。「small images」の「かわいい」表現は、いわばクライアントに対する非常に巧みなプレゼン方法かもしれない。
 世に出回っている様々な商品と同じように、建築にもクライアントを惹きつける訴求力が必要である。それは、建築作品だけでなく建築家の人間力も重要である。しかし、それは建築表現の本質にはならないことが多い。石上さんは、自分は自分の求めている建築表現の実現を目指しながら、訴求力のある「かわいい」プレゼンをしているのかもしれない。そうしているならば、非常にしたたかである。

 こう考えると、原さんが「デザインのデザイン」に書いていた言葉が思い出される。「欲望のエデュケーション」。ヨーロッパでは、このようなプレゼンは求められない。このようなプレゼンが出てくるのは日本に特殊なことだろう。日本の潜在的クライアントの欲望からこの「かわいい」表現が生まれてきたと思う。ヨーロッパでは、plan, elevation, section, perspectiveで十分であるように思う。ドイツやスイスのコンペ雑誌ではこのような表現を目にしたことがない。

 建築で食っていくためには、このようなしたたかさがある程度求められる。日本では、この求められるしたたかさの程度が高い気がする。

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